『オルフェウスの窓』の舞台へ!レーゲンスブルクで聖地巡りの旅
旅の始まりはレーゲンスブルク中央駅
作品中では、レーゲンスブルク中央駅は別れの場として登場する。
が、私の旅はもちろん到着から始まる!電車が遅れ、土曜の夜22時半ごろ到着。
駅舎を出ると、正面にはもう今回の滞在先、パークホテル・マキシミリアンが視界に入り、ドキドキしながら歩き出す・・・
『オルフェウスの窓』、通称『オル窓』の聖地巡りのオンライン旅は、1年半前から温めてきた。ようやく本番の日が迫る。
(『オルフェウスの窓』及びオルフェウスについての解説は、一番下までスクロールしてください。)
名門パークホテル・マキシミリアン
作品中では、イザークとレーゲンスブルク管弦楽団が街のオペラハウスで演奏する、
ベートーベンのピアノコンチェルト第5番『皇帝』の指揮をするためにフランクフルトからやって来たショルツ先生が宿泊している。
また、第四部では、記憶を失ってしまったユリウスを助けるためにイザークに呼ばれたダーヴィトも宿泊し、マリア・バルバラ姉様が訪ねてくるシーンもある。作品中で唯一幸せになりそうなカップルの出会い・・・
ホテルのご予約はこちらから〜
ホテルの様子を少し動画でご覧あれ!ロビー、お部屋、朝食会場などをご紹介。70年代と比べ、だいぶん改装されたと思うので、今はおしゃれなブティックホテル風。
お部屋は広くて使いやすく、デスクが大きいのが良かった。池田先生はスイートにお泊まりだったかもしれないけれど、私のシングルルーム(角部屋)でも十分快適にお仕事できた。
考察:ヴァルハラ神殿へは(作品中に描写されている通り)走っていけるのか
謝肉祭のカーニバルの日に、追っ手を交わすためクラウスとユリウスが逃げ込む地下室があるのがヴァルハラ神殿。
漫画での描写より、レーゲンスブルクからヴァルハラ神殿までは結構近い!と思われがちだが、実は最短距離で10kmある。
その最短距離は車道沿いを行くショートカットなので、当時は無かったと思われるため、実際に二人が走ったのはドナウ川沿いの土手のはず。本当はどのくらいの距離を走ったのか気になるので・・・
ここはやっぱり走ってみるしかない!
朝6時半。この三日程、緊張して寝られない日々が続いたにも関わらず、全然眠くない。
着替えて準備運動を終え、さぁ出発!
日曜の朝なので、人通りも少なく、時折私と同じジョガーや犬の散歩に出る人にすれ違うくらい。
「おはよう!」と挨拶しながら、吐く息が白いことに気づく・・・11月初めのレーゲンスブルク、朝の気温は五度以下。グローブをしてきて良かった!
ヴァルハラ神殿まで走っていく検証まとめ
◯走っていくのは可能。13kmほど走れる体力が必要。だが負傷して途中から気を失ったユリウスを抱えてて走るのはかなり難しい。
◯作品中は、謝肉祭のカーニバルの日、つまり2月なので、今回私が走った11月よりも格段に寒い。ユリウスはドレスにサンダル、クラウスはシャツ一枚で、冬の雨の寒い中走るのは相当過酷なこと。ユリウスが気を失っている間にアルレラウネはマントをユリウスにかけてあげているので、クラウスとアルレラウネが火を起こしているのは納得。
◯途中、ずっと土手沿いに走っていくので足場の悪いところも多い。途中に藪などはあるが、基本的に見晴らしは良いので、逃げるルートとしてはあまり好ましくない。
◯実際に走ってみたい場合は、行きまたは帰りをバスで移動することも可能。夏場(4〜10月)はフェリーも可。
バスの場合、中央駅バスターミナルから5番のバスで約35分。Donaustauf Walhallastr. またはDonaustauf, Reifldinger Straßeで下車(交替でどちらかに停まる。)、上り1 km程度。
◯お勧めの時間は、朝、日の出の時間に合わせてヴァルハラ方面に走ると、ちょうど朝日が見られる。夕暮れ時にレーゲンスブルクに向かって走るのも良いが、ヴァルハラ神殿を背中に見て走るのはもったいない!
◯ヴァルハラ神殿でお手洗い利用可能。
ケプラー記念碑
イザークとレーゲンスブルク管弦楽団がベートーベンのピアノコンツェルト第5番『皇帝』を演奏の場。ショルツ先生が汽車をニュルンベルクで途中下車し、早朝に戻ってきてくれた感動のシーン。
記念碑のど真ん中には、レーゲンスブルクに住んでいた幾何学者ケプラーの胸像があるので、グランドピアノを置けない!という話もあるけれど。胸像を一旦撤去し、グランドピアノの脚を外して縦にしたら、ちゃんと(?)置けると思われる。
記念碑の前にはフルオーケストラでも大丈夫な広い芝生が。
トゥルン・ウント・タクシス城と聖エメラム教会
聖ゼバスチャンの校舎や学校の敷地のモデルがこのお城。もちろんあの「窓」も。
窓を見るには少しだけ苦労しないといけない。何故なら、歩道とお城を囲む柵の間には藪があるからだ。特に夏は葉が生い茂ると大変・・・。
この窓を見つけられずに泣く泣く帰ったという方の話は何度も聞いた・・・そのくらい、見つけづらい。
正確な場所を知りたい場合は、ぜひSNSから個別に連絡くださいませ。(SNSは、右の方にポップアップが出ています。)
アクセス:中央駅から西方面、公園に沿って徒歩約10分。
実際の音楽学校は、聖マンクと聖アンドレアス教会付属の音楽学校。ドナウ川の中州、シュタット・アム・ホーフにある。教会は一般公開されていないが、ミサに参加することは可能。
トゥルン・ウント・タクシス家に養女として貰われるのが、聖ゼバスチャンの校長先生の実の娘で、ヘルマン・ヴィルクリヒ先生の母親、エレオノーラ。
そういう意味で、エレオノーラはお嫁に行くまでの少しの間このお城に住んでいたことになるので・・・お城の見学をしたい方は内部ツアーで中に入れます!(写真厳禁!!)
付属の聖エメラム教会は無料で見学ができる。
なお、実際にこの記念碑の前に行くと、昼間でも若者たちが集ってお酒を飲んでいたりするので、危ないと思ったら、遠くから眺めるだけにしましょうね。
アクセス:レーゲンスブルク中央駅から徒歩1分。(駅の正面をを出たらやや左前にすぐ見える。)
市立劇場(ビスマルク広場)
しまった!写真を撮り忘れている。
作品中では、オペラハウスのモデルとなっている。実際とは少し見かけが異なる・・・。
○イザークが『皇帝』を演奏するはずだったがモーリッツに邪魔され中止に。
○謝肉祭のカーニバルの日、モーリッツがフリデリーケに白いドレスを着せて一緒にバルコニーからパレードを見物しているところをイザークに見つかる。
アクセス:中央駅から徒歩15〜20分。
レーゲンスブルク大聖堂 聖ペーター
作品中は聖ペテルスとして登場(聖ペーターと同じこと。)する双塔の素晴らしい大聖堂。
何度となく描写され、ユリウスが「さらば・・・わが心のレーゲンスブルク」聖ゼバスチャンを去る際にも背景に描かれている。
アクセス:中央駅から徒歩約15分
大聖堂について詳しく知りたい方はこちら
また、ユリウスがソプラノのソロに抜擢される合唱団は、実在する大聖堂の少年合唱団「Domspatzen」だと思われる。
現地で彼らの歌うミサに参加することは可能なので、スケジュールを確認してから旅の計画を立てよう!私は、毎週日曜日だと思い込んでいたら、今回滞在した日曜日には歌わないことが発覚でショックだった!!
ちなみに、半年も住んでいたので一回くらい行ったことあるでしょう、と思われるかもしれないが、当時は(不真面目な)学生で、日曜日の午前中に起きることすら叶わない生活をしていた為、行ってない。
大聖堂前広場
フリデリーケが野菜売り場で働いているところ。
実際に毎週のマーケットが開かれるので、野菜をたくさん買って大鍋で野菜スープを作るのは可能。
市が立っていない時は、駐車場になっており、常設のケバブ屋さんがあって人気。今でも同じ経営者か分からないけれど、留学時代には飲みに行く時によくお世話になった・・・
アクセス:大聖堂の裏、すぐ
「私たちはケプラー通りのブレンネルです。」
幾何学者ケプラーが住んでいた家がある、ケプラー通り。ドナウ川と並行して走る道で、バスも通っている。
具体的にカタリーナを含むブレンネル家があった番地は不明。ここには、イザークがカタリーナにピアノを教えるために通っていた。カタリーナはユリウスが銃弾で負傷した際にお医者さんを呼んだり、イザークの妹フリデリーケの具合が悪い時に献身的に看病したりと活躍。
イザークに結婚を申し込むが玉砕・・・
アクセス:大聖堂から徒歩約5分
カストラ・レギーナ(ポルタ・アウレリウス)
謝肉祭のカーニバルで、クラウスに扮したヘルマンがユリウスを誘拐する際に、ここから川上に移動した、とされる。
実際は、ここから川上に走ると市街地方面に向かってしまうので、クラウスがユリウスを襲う場所のモデルは別のところではないかと思われる。
このカストラ・レギーナは実は凄い遺跡で、二つの世界遺産に同時に登録されている。一つ目は2006年に登録された「レーゲンスブルク旧市街とシュタットアムホーフ」、二つ目は「リーメス」と言って、ローマ帝国の国境線のこと。2021年に登録された。
ここは、ローマ帝国の北の国境だった。つまりドナウ川が国境だった。この街の1850年ほどの歴史は、ここから始まる。
池田先生は、そんな凄い遺跡までも自然に作品の一部としてしまうなんて、それもまた凄い!
アクセス:大聖堂から徒歩約5分
ドナウ川の中洲を散歩しよう
追手に負傷させられたクラウスがユリウスと一緒に歩いているのがここだと思われる。クラウスは、川沿いを歩けばすぐに隣町なので、そこから辻馬車でも拾う、と言っているがその隣町がどこなのかは不明?
何故なら、その隣町は「ドナウシュタウフ」ではないかな?そうであれば、彼らがアジトにしているヴァルハラまでは馬車に乗るまでもないからだ。ドナウシュタウフの街からヴァルハラまでは約1km。上りだけど、辻馬車が行くような場所でもないし、歩くしかないと思う。
アクセス:石橋をシュタットアムホーム側に渡り、階段を下りる。
『オルフェウスの窓』ゆかりの場所を巡る旅 まとめ
よく考えたら、何と22年越しの『オル窓』旅。何とも感慨深い!今回の旅も一年半前から暖めていた。
旅の終わりもレーゲンスブルク駅。(ホームが遠くて焦ったのでまた写真撮り忘れ。)
まだまだ作品に出てくる場所もたくさん隠れている。イザークのアパートや、酒場は見つかっていないし・・・
そういう訳で、また行かなきゃ!
街歩きガイドのお問い合わせはこちらまで:
ks-castle@hotmail.com
『オルフェウスの窓』とは・・・
池田理代子さんによる長編漫画。週刊マーガレットに1975-1981年掲載。
四部構成で、第一部と第四部の舞台がレーゲンスブルクとなっている。
南ドイツの古都、レーゲンスブルク。音楽学校の塔にある、古ぼけていまにもくずれそうな窓は400年も昔から“オルフェウスの窓"と呼ばれていた。この窓にはひとつの言い伝えがあった。ここから地上を見おろし、最初に視界に入った女性と宿命的な恋におち、しかも悲劇的な結末をむかえるという。ユリウスはこの学校のピアノ科に入学しこの窓をとおしてイザークと知りあいクラウスともことばをかわす。女性でありながら男として育てられたユリウスはアーレンスマイヤ家の財産争いにまきこまれていく・・・。
参考:集英社のHP
オルフェウスとは・・・
漫画の冒頭でも紹介されていますが、あの悲劇のギリシャ神話をおさらいすると・・・
詩人で歌人のオルフェウスが二度にわたり愛するエウリディケを失うことになる、ギリシャ神話。
二人の結婚式の日に毒蛇に噛まれて亡くなってしまうエウリディケを追い冥界に降りるオルフェウス。冥界の王ハデスと妻ペルセフォネの前で彼女を返して欲しいと懇願する。
その様子に心打たれたハデスは、例外的にエウリディケを地界へ返すことにする。ただ一つの条件の元に。「地界に戻るまでオルフェウスは後ろを振り返ってはいけない。」
しかし、あと少しで地界というところで、後ろにいるエウリディケを一瞬振り返ってしまったオルフェウスは二度と彼女を見ることはなかった。
悲しみにくれるオルフェウスは、エウリディケを偲んで歌い続け、いつしかディオニソスの怒りを買い、彼の取り巻きの女たちに八つ裂きにされてもなお歌い続けるままへブロス川に投げ込まれてしまう。
参考文献:30-Sekunden-Mythologie