バンベルクと七つの丘の話 世界文化遺産の街
世界遺産の街バンベルクは、いくつも異名を持っています。
その中で、今回は「フランケンのローマ」と呼ばれる所以の七つの丘にフォーカスして、その観光の魅力に言及してみました。
例えば、バンベルク大聖堂が立っているドームベルクを始め、バンベルクを旅するには丘がつきものなのです。
ガイドブックにも載っていないかもしれないバンベルクの魅力を一緒に探しに行きましょう!
◯バンベルクのホテル検索はこちら。

「フランケンのローマ」なんていう異名もある程、バンベルクはイタリアのローマと同じく七つの丘の街。
市街地は石畳も多く、起伏もある街なので、街歩きはゆっくり時間をとって楽しみたいところ。
バンベルクの一般的な観光情報についてはこれまでソーシャルメディアやYouTubeでも色々と発信してきたが、今回はちょっと視点を変えて、バンベルクの七つの丘にクローズアップしてみたい。
まず、その「七つの丘」というのがこちら。
・ステファンスベルク(Stephansberg)
・カウルスベルク(Kaulberg)
・アルテンブルク(Altenburg)
・ヤコブスベルク(Jakobsberg)
・ミヒェルスベルク(Michelsberg)
・アプズベルク(Abtsberg)
・ドームベルク(Domberg)
では、一つずつ観光ポイントを探っていきたいと思う。

・ステファンスベルク(Stephansberg)
もちろんその名の通り聖ステファン教会もあるが、この丘の話になると、私の中にまず最初に思い浮かぶのがシュレンケルラ(Schlenkrla)の醸造所。
バンベルクに二箇所だけ残る、伝統的なラオホビア(スモークビール)を醸造しているブルワリーの一つ。
丘の上という立地を利用し、地下でビールをラーガーしている。
写真は旧市街のドミニカーナー通りにあるシュレンケルラのビアホール。
以前、社長のマティアス・トルムさんに二度ほど取材でお会いして撮影などさせて頂いた。
その時の動画はこちら。ビール好きな方もそうでない方もぜひご覧ください。

今回は取材ではなく個人的にビアホールにご飯を食べに行った。
相変わらず美味しい名物ショイファラ!(豚の肩肉のグリル、フランケン地方の郷土料理)
付け合わせはザワークラウト(発酵キャベツ)にクネーデル(じゃがいも団子)
一人でもふらっと気軽に入れるのがいいところ。
相席になるけど、周りの人とのおしゃべりも楽しいよ。

更に今回は、もう一つの名所を発見。
公認ガイドのマイヤーさんと街歩きしている間に、彼おすすめのレストランやカフェについてもちゃんと質問済み。
シュレンケルラの真後ろあたりに、もう一軒の老舗ブルワリー、シュペツィアル(Spezial)のやっている通称Speziと言うビアガーデンがあるとのこと。
暖かい日だったので、滞在二日目に行ってみることに。
ここでも名物ショイファラ!
流石に付け合わせを変えて、キャベツのクリーム煮(Wirsing)にしたけど、二日連続ショイファラを食べるなんて贅沢すぎ!
(というか食べ過ぎ・・・汗)
ここでは、特等席の見晴らしのいい四人席に一人で座っていたところ、女性二人が相席の申し出。
喜んで、と言うことで三人でおしゃべりしながら楽しい時間を過ごすことができた。
そのお二人は元同僚の友人同士で、一人が東部のドレスデンから南西部のボーデン湖まで車で友人を訪ね歩く街だそうで、素敵な旅だなぁと。
お話を聞いていて嬉しくなった。


・カウルベルク(Kaulberg)
カウルベルクは今回初めて訪れたと思う。
バンベルクの教区教会があり、こんなに素晴らしい教会があったのかと。
何度もバンベルクの街には遊びに来ていて、街の隅々まで知っているつもりになっていたけれど甘かった。
ロマネスク様式の消防の見張り塔が併設されていて、ここから火の手が上がるのを確認するとすぐに消防に出動の合図。
数百年に渡り、バンベルクが大火事に見舞われることがなかったのは、この見張り塔のおかげだとか。
(外観の写真撮り忘れ!)
更に教会は、同じくロマネスク様式からゴシック様式に改築され、内部はとんでもなく豪華なバロック様式。
ここは後述のバンベルク大聖堂と異なり、ルートヴィヒ一世の浄化の洗礼(歴史回帰主義)を受けることなく、バロックのまま保たれた模様。


・アルテンブルク(Altenburg)
バンベルク城、とも言われる丘の上の要塞(廃墟)に行くのは二回目。
前回は街からフラッと夜の散歩に行って帰っただけだけど、今回は明るい時間に行ってみた。
カウルベルクからアルテンブルクまで上って下りて、また上る。
二キロ程度の「軽い」散歩かなと思っていたけど意外と時間がかかった。
写真は、カウルベルクの中腹にある標識で、アルテンブルクこちら、となっている。
街歩き中に偶然発見。
可愛い。

草原の中、そして森の中を行く素敵な散歩道。
アルテンブルクはバンベルクで一番高い丘と後から知った。
眺め良い!
塔(入場料の1ユーロを貯金箱に入れる)に上るとバンベルクの街が見渡せる。
山頂に着いた時には結構汗だくだったので、塔の上で感じる風が気持ち良い!


・ヤコブスベルク(Jakobsberg)
名前の通り、聖ヤコブ教会があり、フランケンの巡礼道の通り道。
ここには、レグニッツ川のほとりに立っている皇妃聖クニグンデ像のオリジナルがある。
数年前に訪れたけれど、今回の訪問では割愛。素晴らしい教会なので次回また行ってみたい。
今回は、ヤコブズベルクとミヒェルスベルクの間にあるVilla Remeisの展望台へ行ってみた。
この写真の場所はヤコブズベルクの一番高い場所なのかな?
ホームページを見るとローテンベルクと言う丘が出てくるが、バンベルクを構成する七つの丘にそんな名前は見当たらず?
誰か教えてください。
ここにはカフェVilla Remaisがあって、昼間はバンベルクの街を眺めながらお茶することができる景勝地。
(月曜休み)
・ミヒェルズベルク(Michelsberg)
アルテンブルクからの帰り道、聖ミヒェル修道院前を通ったが、今なお絶賛工事中。
2014年からの修復作業が10年たった今でも終わりが見えない模様。
噂では2026年には完成するとか?
そう思うと、修復前に訪れることができた十数年前の経験はもの凄く貴重だったんだなぁと。
写真は、ドームベルクにある新宮殿のバラ園からミヒェルズベルクの修道院をみたところ。

・アプツベルク(Abtsberg)
ここはまた未踏の地(だと思う)。
次回また。

・ドームベルク(Domberg)
Last, not but least…というか、バンベルクで一番有名な丘はここだろう。
旧市街地のドミニカーナー通り(Dominikaner Straße)から階段、または坂を上がって訪れる方が多いはず。
ドーム、というのは大聖堂のことで、文字通り坂を登るとどーんとバンベルク大聖堂が構えている。
さらには旧宮殿、新宮殿と二つの宮殿が道を挟んで隣り合わせに立っているところも興味深い。
バンベルク大聖堂は13世紀にロマネスク様式で建築され、その後ゴシック様式に改築、拡張されたのち、17世紀にバロック化され華やかな内装が施された。
しかし、19世紀に歴史回帰主義を重んじたバイエルン王ルートヴィヒ一世の命で、内部のド派手なバロックの装飾は取り除かれ、ロマネスク様式に「復興」された。
現在では常にどこか修復している。

この門は、もともと一般の方が出入りするところで、今でも大聖堂を見学する際の入り口となっている。
彫刻は左から聖ステファン(石を持っている)、皇妃聖クニグンデ、皇帝聖ハインリヒ二世、聖ペトロ、アダム、イブ。
外観はかなり壮大なロマネスクとゴシック。
門の上に施された彫刻の意味など色々と公認ガイドのマイヤーさんに伺って、あまりのダークさに考え込んでしまった。
機会があれば、またそんな話もまとめたい。

バンベルク大聖堂内にはバンベルクが街として発展するきっかけを作った皇帝聖ハインリッヒ二世と皇妃聖クニグンデの遺骨が納められいる。
その石棺の彫刻を施したのが16世紀に活躍したあのティルマン・リーメンシュナイダーだと聞いて、改めて見学したかったのだが・・・不覚にも忘れてしまった。
フランケン地方を旅すると、リーメンシュナイダーの名をあちこちで見かける。
彼の作品をテーマにした記事もそのうち書きたいなぁ。


さて、18世紀に新宮殿を建てた際、旧宮殿を解体して新宮殿を更に拡張する予定だったらしいが、予算の関係で断念。
現在では狭い道路に、建物同士を繋ぐために作っておいた出っ張りがそのまま残っていて面白い。
新宮殿は、バロック様式に惚れ込んでいた領主司教ローター・フランツ・フォン・シェーンボルン(Lothar Franz Schörnborn)の命で作られたゴテゴテのバロック。

そして、新宮殿に併設のバラ園がとにかく美しい。
バラ園は同じくバロック狂だったローター・フランツの甥っ子フリートリヒ・カールが整備した。
見頃は6月半ばから8月ごろまで。
園内は誰でも入場でき、夏場は併設のカフェでバラの香りを嗅ぎながらのんびりできる。
以前は、ギリシャ王のオットー(バイエルン王マクシミリアン二世の弟でルートヴィヒ二世の叔父)と妻アマーリエがギリシャから亡命してきた際に滞在していた宮殿、という印象が強かったが、もっとずっと前にローター・フランツが建てたバロック宮殿という視点で見るとまた味わい深い。
ローター・フランツ・フォン・シェーンボルンについては後述。
旧宮殿は大規模な木組み造りが美しく、一番古い部分は九世紀ごろからの歴史を持つというので凄い。18世紀当時、破壊されなくて良かったなぁと・・・


今回聞いた興味深いお話をもう一つ・・・。
まず、レグニッツ川の真ん中に立っているいわゆる「旧市庁舎」について。
歩道橋から見る木組みの家の景観が有名で、バンベルクきってのフォトスポットとしても人気がある。
今回の取材旅ではせっかく公認ガイドさんのマイヤーさんを専属でつけていただいたので、改めて何故ここに市庁舎を建てたのか訊いてみた。
以前は、宗教界と市民界のちょうど真ん中だから、くらいしか聞いたことがなかった。
そしたらなんと、そもそもここは自然にできた中洲ではなく、木材を川に敷いて作った人口の中洲だと。
そこからびっくり。
14世紀から15世紀にかけて建てた市庁舎は今でも、その木材の上に立っている。
更に、木組みの家は旧市庁舎ではなく「ロットマイスター・ハウス」と言う監視所兼兵士たちの詰所だったとか。
一階部分に留置所があったこともあるとか。

では、なぜ人口の中洲を作ってまで川の中に市民のための市庁舎を建てたかというと、それは税金対策だったそう。
宗教界(ドームベルク)はタックスヘブンで、レグニッツ川向こうの市街地は税金の支払いが生じる。
一方で、ドームベルクに市民のための市庁舎を建てるなんて言語道断・・・
悩んだ上で市民の出した結論は、川の中に建てることで税金を免れるということ。
何という市民の知恵!
一休さんみたいだ!

素晴らしいフレスコ画の書かれた市庁舎と、この木組みの家は実は別物だったなんて。
ところで、絵の下の方から足がはみ出ている!
このフレスコ画は二箇所だけ3Dになっていて、足のちょうど上の方に天使もいる。
詳細はまた今度かな・・・。裏っ側の話もしたいし。

そして、バンベルクの異名は「フランケンのローマ」だけではない。
「小ベニス」と言われる家並みは、昔漁師さんたちの家だった場所で、船を家の下に引き込み、収穫物の荷下ろし、荷出しができるようになっていた。
今では、レグニッツ川の中や側に立っているカラフルな家並みがベネチアみたいだと人気のフォトスポットになっている。


さて、前述のローター・フランツ・フォン・シェーンボルンについて少々書きたい。
そもそも今回バンベルクを改めて取材したのは、昨年彼の建てたヴァイセンシュタイン城(Schloss Weißenstein)を訪れたことがきっかけ。
それもあって、同じく彼が建てさせたバンベルクの新宮殿と、彼が大々的にお庭を作らせたゼーホーフ城を改めて訪れたいと思った。

ヴァイセンシュタイン城は2024年のシーズン最終日(しかもハロウィーンの日)に現地を訪れ少々取材させて頂いた。
こちらは、1971年よりKage家の私有で、内部ツアーにて見学可能だが、写真撮影は普段は許可されていない。
素晴らしいバロック様式のお城は、バロック様式にのめり込んでいたローター・フランツの傑作と言ってもいい。
特に「階段の間」が有名で、Netflixで公開されているドラマシリーズ『シシィ』の結婚式シーンなどが撮影された。

階段の間のみならず、饗宴の間も素晴らしい。
このお城を建てることができた背景には、オーストリアの皇帝フランツ一世(女帝マリアテレジアの夫)が皇帝に即位するために尽力した功績を讃えられたことがあるそう。
訪れた時間にはもう薄暗くて大した写真が取れなかったため、改めて取材申し込みしたいと思っている。
ヴァイセンシュタイン城のホームページはこちら。
内部見学の他、イベントや結婚式などで貸切が可能!

ゼーホーフ城はバンベルク司教の夏の離宮で、現在も暖房設備がないことから春から秋にかけてのみ訪問ができる。
広大な庭園を今の規模に作り上げたのが、ローター・フランツ。
現在はプラタナスと芝が中心だが、当時は花壇はもちろん、野菜やハーブ園もあった。
大きなカスケードがある反対側からは、当時はバンベルクの新宮殿が見えたとか。
カスケードには時期が早く、まだ水が入っていなかったので、写真は次回。
城内にもは、彼の大きな肖像画が架けられている。
ゼーホーフ城についてまとめた動画はこちら。
